FAXマガジン
大ヒットへの道はタイトルが決め手!
今の出版物の売れゆきは、書名、装丁デザイン、帯のコピーでほぼ決まります。
一例をあげると、1975年に講談社から出版された『世界一の世界』(青山栄一・北詰洋一翻訳)という3巻ものの本があります。この本の初版は、上巻は2万部、下巻が8千部で、実売数は伸びませんでした。
しかし、書名を原書に合わせて、『ギネスブック』と変えました。その結果、発売したその年は36万部、その後も20万部と、大変貌を遂げました。
書名の良し悪しで、これだけの差がでるのです。
現在の書籍は、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどで、お菓子を買う時と同じように、まず視覚(パッケージ)で興味を持ち、感情で買う人がほとんどです。
つまり、時代の空気をしっかり捉え、それを的確な言葉で伝えられる編集者のみが「ヒットメーカーになれるチャンスがある」ということです。
また、ここ何年かのヒット書籍の書名を分析すると、「なぜ〜は〜なのか?」という読者の共感を得る問いかけのスタイルが相変わらずのダントツトップです。
某ネット書店で「なぜ?」を検索すると、3700件以上が表示されるくらいです。これは、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』(山田真哉著/光文社新書)の大ヒットが引き金となり、多くの出版社がそれに乗っかったという流れから生まれたものです。
昨年は『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか? 誰も教えてくれなかった!裏会計学』(小堺桂悦郎著/フォレスト出版)がそれにあたります。
しかし、すべてがすべてヒットしている訳ではありません。実際に売れゆきがいいのは「なぜ?」という疑問系である以外に大きな特徴があります。
それは、日常生活において、何気なく心の中で抱いていた疑問を分かりやすく、書名で表現しているという点です。
「軽トラで住宅地をグルグル回っているだけなのに、どうしてさおだけ屋って、潰れないの? 不思議だよね」という共感を得られたからこそ、読者に受け入れられたのです。
業界では、飽きられムードが出始めています。しかし、「困ったときの“なぜ?”」ではありませんが、もうしばらくは続くのではないでしょうか。
どんな疑問を提示するか? どんな「なぜ?」が新発見できるか? センスやスキル以前に、アンテナを張りめぐらせ、それを客観視できる眼力と、たくさんの人から得た情報を自分の引き出しにすることが今の編集者やライターに求められるのではないでしょうか。
その他、「国家」+「品格」、「ヤバい」+「経済学」という意外な言葉の組み合わせ。また「○○力」という造語スタイル、『人は見た目が9割』(竹内一郎著/新潮社新書)などの数字スタイルといったケースもヒットの王道です。
アイデア出しの基本は、あらゆる情報の蓄積力。このベースなしでは、コピーライティングは磨かれないのではないでしょうか。