堺屋太一シリーズのご案内

「日本 米国 中国 団塊の世代」 - 書籍概要

●日本 団塊の世代:プロベーション(保護観察)世代−豊かさの夢を信じ破られた世代
●米国 ベビーブーマー:ウッドストック世代−客体であり続けた世代
●中国 老三届(ラオサンジエ):文化大革命世代−利用され捨てられた世代

日本、米国、中国の60歳を過ぎた著述家が、それぞれの国の団塊の世代の人生、時代背景、喜びと苦悩を書き下ろす。これら原稿を全て読了した上で、堺屋氏が原稿を書き下ろした、団塊の世代論の総括ともいえる書籍です。

堺屋氏は今日の世界大不況と団塊の世代との関係についても触れ、この危機をチャンスに転化して、日本経済が復活していく未来像を描いています。

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「堺屋太一の青春と70年万博」 - 内容紹介

第五章 『400万円の投資が70年万博を生んだ』 より一部抜粋

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堺屋太一が自分でガリ版を切って作った資料ではとても追いつかない。もっと本格的で詳細な資料が必要である。英文の資料にあたって、どうにか材料を集めたものの、その英文を翻訳する必要があった。堺屋太一には工業用水課の仕事があるから、自分で翻訳しているひまはない。結局、翻訳のために人を雇い、印刷も印刷屋に頼むことになった。

新たな資料を作るのに、四〇〇万円かかった。工業用水とは何の関係もない仕事であるから、通産省が金を出すわけもない。商工会議所の予算をとるための資料だから、この段階では商工会議所からも金は出ない。すべては堺屋太一の自腹であった。
当時の堺屋太一の月給は四万円ほどであった。つまり月給十年ぶんの資金を、自分で提供したのである。堺屋太一はすでに地下水汲み上げの禁止を徹底するために、もしも地盤沈下が止まらなければ自分が水道代を払うという証文を書いている。これは資産家の父が保証人になってくれたのだが、地盤沈下は見事に止まったので、父に金銭的な負担をかけることはなかった。
今回の四〇〇万円は、すべて堺屋太一の個人負担だった。銀行からの借金である。幸いなことに、ベートさんのアドバイスで買った自宅の土地が、東京オリンピックがもたらした地価の高騰で、驚くほどの担保価値をもっていた。それにしても、一介のサラリーマンが、生まれ故郷の大阪のため、さらには日本国の将来のために、年収の十倍の金額を自腹で負担するというのは、常軌を逸した行為である。
堺屋太一は平然としている。目標の実現のために、最善を尽くす。もし失敗したら投資が無駄になるといったことは考えない。四百年の伝統をもつ商家に生まれたDNAのなせるわざか。

この四〇〇万円の投資の効果は、確かにあった。大阪商工会議所で、四〇二万円の予算がついたのである。四〇〇万円の投資で、四〇二万円の予算では、まことに効率が悪い。しかしこの四〇二万円は、大阪商工会議所の予算であるから、公に胸を張って使える貴重な資金である。
この予算が出たのが、東京オリンピックの年、一九六四年の春である。すでに予算案を立てた段階で、商工会議所は関西を地盤とする与党議員に陳情を始めていた。国会議員の間にも、大阪万博という壮大なビジョンが拡がっていった。
このことが、絶大な援軍をもたらすことになる。
首相になったばかりの佐藤栄作である。
佐藤栄作はその後、七年八ヶ月に及ぶ長期政権を実現して、日本の高度経済成長の仕上げをした偉大な首相であり、東西冷戦の中で非核三原則を貫きノーベル平和賞を受賞することになった。田中角栄、福田赳夫など、のちの歴代の首相を育てた人物でもあった。

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